というわけで、AIと旅するおっさん4周年記念作品3部作が完結いたしました。
最終話に関しては27分とかいう、今までにない長尺になりました。
その中で新たな挑戦と言いますか、アイディアが生まれ、AI旅動画にとっても転機となる作品になった気がします。
こちらが今回の旅でめぐった場所です。
安珍・清姫伝説を調査するうちに、結局、目ぼしいところはすべて訪れる事になりました。
毎度のことなのですが――
当初は20分くらいの動画でまとめよう、と考えていました。しかし、調べていくうちに、じっくりやりたい、そういう気持ちにさせられました。
何故でしょうか。
それは『AI旅としては、安珍・清姫伝説をこう捉える』という解釈を表現したかったからです。
具体的に言うと、安珍・清姫伝説を扱った物語の多くは『女の執念は恐ろしい』という部分に焦点が当てられていました。
確かに、裏切られ怒り狂った清姫が大蛇に変わり鐘ごと安珍を焼き殺す、これだけ聞くと恐ろしい話であり、人々の興味をひくのもわかります。
清姫は元祖ヤンデレ。そういうシンプルなカテゴライズがわかりやすいのもわかります。
しかし、果たしてそれだけなのでしょうか。
人ならざる者に変わりつつある自分が、すべてを焼き尽くしてしまうのではないかと恐怖する、そういう気持ちが清姫にあったのではないか。そう考えるようになりました。
今回参考にした、道成寺縁起絵とき本では、道中、安珍を追う清姫にこういうセリフがあります。
「私は、前世でどんな悪い行いをして、今こんな目に会っているのでしょうか。観音様、どうぞ私の人生をお救い下さい。今私がしている行いは、私の運命をもっと悪くするのでしょうが、どうぞ来世でも私をお救い下さい」
そして、絵ときに描かれている清姫の顔は恐ろしいものの、その目には涙が浮かんでいるように見えます。
さらに終盤、鐘を叩きながら、炎で6時間鐘ごと安珍を焼いた大蛇は、血の涙を流し、その場を立ち去ったとあります。
執念は恐ろしい、と言ってしまえばそれまでですが、執念とはすなわち歪んでしまった想いであり、その結果、感情が暴走した状態なのだと思います。
清姫は自分を止められなかった。
本当は苦しんでいたのではないだろうか。
AI旅動画では、そういう解釈で描けないかと、そう考えたのです。
それが、第二話のラスト、切目王子跡での祈り。の部分です。
清姫が何を祈ったのかはわかりません。しかし、ひょっとしたらそう願ったのではないだろうか、そう考える事で物語の見え方が変わってくるのではないか、そういう思いを込めて作りました。
話は戻り、それらの感情の変化を描くにあたって、やはりより多くのスポットを訪れる必要があると考えたのです。
つまり、移動距離なのです。
伝説では、清姫の生家から道成寺まで約40kmを追いかけたとされています。
40kmを移動しながらずっと怒り続けるでしょうか?
恐らく、様々な事を考えたはずです。
その距離と時間こそが、この物語の味なのではないでしょうか。
その結果、3話構成、1時間越えの動画になったというわけです。
話は変わりますが
今回の新しいアイディアとして『ゆっくり風解説』が導入されました。
インサート動画は以前かやりたかったのですが、どういう形で入れるのがベストかをずっと悩んでいました。上記のようなゆっくりのパロディとすることで、詳細な情報も途中で差し込むことができるようになりました。
最後に
さて、思い起こせば今年の正月に清姫MAPのアイコンのドット打ちをしていました。
実に10ヵ月かかりました。
途中、声が出なくなって作業が停滞することもありました。
それでも最後まで作ることができて本当に良かったと思います。
動画の冒頭
「前から思っていたんだけど、御坊市に入る時に見えるあの看板は何だろう」
まさに旅の醍醐味だと思います。
ふらっと立ち寄った道成寺。そこにこんな物語があったとは、その時は思いもしませんでした。しかし出会ってしまった。
だからこそ、どうしても最後まできっちり作りたかったのです。
最後の最後に――
撮影を許可して頂いた、道成寺参道雲水様、道成寺様、EH製菓(株)様、御菓子司有田屋様
様々な素材を提供してくださったクリエイターの皆様。
そして、すべての視聴者様に
心より感謝いたします。